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ブラックブック

苦しみに終わりはない・・・
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『ブラックブック』とは、誰も信用できない時代で、唯一真実の書かれた黒い手帳。

1944年、ナチスドイツ占領下のオランダ。ユダヤ人歌手のラヘルは、ドイツ軍に隠れ家を爆撃され、ファン・ハインという男の手引きによって、家族とともに南へ逃げようとす途中でナチスに見つかり、家族を目の前で殺されてしまいます。
レジスタンスに助けられ、髪を染めて「エリス」と名前を変えて生まれ変わります。スパイとしてナチス諜報部のムンツェに近づきますが、やがて彼に惹かれるようになり・・・。

ポール・バーホーベンの監督作品にしては、今までとはちょっと違った雰囲気の映画でした。
ナチスを題材にする映画は最近増えましたが、スパイというのもあまりない描き方で、最初から最後までぐいぐい引っ張っていってくれるエンターテイメント作品です。
途中、ちょっと「こ、これは・・・」と絶句するようなシーンもありましたが、面白かったですよ。
重厚な描き方でもなく、飽きさせないようなストーリーなので、敬遠する人でも違う感想も持つかもしれません。

エリスの強靭な逞しさは美しい。
生きることが難しい状況に置かれた時代をまざまざと見せ付けられました。
スパイとして送り込まれながら、ナチスの将校を愛するようになり、レジスタンス仲間からは裏切り者として見られてしまう・・・。
必死で仲間を救おうとしながらも、反逆罪で投獄されたムンツェを心配しなければならないし。
話の展開がものすごい激動でした。
(ラヘルとムンツェは、実生活でもカップルなんだそうな)

終戦後も安心できるような状況になるどころか、ますます追い詰められてしまい、とうとうムンツェと一緒につかまってしまいます。
戦争が終わったのに、市民たちのあの箍の外れた暴力的な行為は、戦前よりももしかしたらひどいんじゃないか・・・。
誰を責めるでもないんですが、人間というのは怖いものだとつくづく思いました。

映画の最初の方で、ラヘルが公証人スマールに「誰も信用するな」と言われるシーンがあります。
この言葉は、最後まで大きな意味を持つ言葉となってました。
なかなかよく練られた脚本だと思いますよ。
「現在」が1956年のイスラエルで、ラヘルがそこで自分の夫や子供と暮らしているのですが、わざわざその年でイスラエルなのも重大な意味があるのです。
第2次中東戦争・・・。

ユダヤ人の戦いにも、ラヘルの自身の戦いにも、終わりはないんだなと思いました。
ナチスとユダヤの戦いって、考えさせられる要素がものすごく多いんですね。
まだまだ不勉強だわ・・・。

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Commented by ten at 2007-05-04 11:01 x
ユダヤ人の女性がナチス将校相手にスパイになる・・・
実話もいっぱいあるし、映画になった題材でも結構多いよね
女性としてのプライドも身体もなげうってユダヤ人のために戦う・・・
どうしてそこまで頑張れるの?って疑問はユダヤ人を理解しないと難しい

>ナチスとユダヤの戦い

紀元前から連綿と続く、イスラム教徒やキリスト教徒との間に赤黒く染み込んだ歴史に比べたら
ナチスとの戦いはユダヤ人の近代史の中に1滴落とされた黒い染み程度じゃないかな
ただ、激烈な戦いではあったと思うけど

何千年もの間、自分達以外の人種をほとんど全て敵にしてきた民族
宗教的にも民族的にも、もの凄く結束力が固くて独立独歩
なのに世界中に浸透して、それぞれの国で高い経済力と権力を持っている
不思議な人達です・・・理解するのはホント難しいよ

ちなみにイスラエルって
その国の国会で「敵性人物の暗殺」を正式に承認した世界唯一の国家です
Commented by gogolotta at 2007-05-05 20:29
☆tenにぃ
書いて早々にコメントありがとう。やっぱり食いついてきてくれたね~。
ユダヤの歴史って、ヨーロッパでもイスラムでも、絶対について回る問題なんだけど、「よそ者」のアジア人が考えても理解ききれないんだよね。
今でも戦いは終わらないし・・・。
イスラエルも不思議な国だよね。
by gogolotta | 2007-05-01 21:04 | 映画おたく | Comments(2)

つれづれに日々のことなど。たま~にですが。


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